中京区にお住まいのS様より雨漏りで困っておられる旨のご連絡をいただき、お伺い致しました。
いろいろと調査を進めていくにつれ、大変な事になっていることが判明しました。
before after
上はいわゆるビフォーアフターの写真となり、一見すればただ単に外装を一新した工事を行ったように見受けられます。
実際には雨漏りにより大変な被害を被っており、木部の構造体に深刻なダメージを受けていました。
~外壁雨漏り修繕編~
ここが一番問題になっていた所です。
窯業系サイディングボードの鎧張りと言われる工法で外壁が構築されていました。
この角(サイディングボードのコーナー)に一番の問題がありました。
アップの写真をご覧戴くと、ボードとコーナー役物のジョイント部に打たれているシーリング部が破断しております。
そして最悪なことに木部の構造体とサイディングボードの間に防水シートの施工がなされていませんでした。
サイディングボードとサイディングボードの継ぎ手やコーナー役物とのジョイント部は、シーリング剤を打設して雨水の侵入を防ぎます。
しかしながらシーリング剤は経年劣化でいずれこのように破断します。
防水シートが張られていれば、たとえシーリングの破断部から雨水が侵入しても防水シートを伝って下まで流れ落ち、最終的には外部へ排出されます。
木部の構造体の腐蝕を防ぐことが出来ます。
かといってそのまま放っておいてもいいと言うことではありませんが、、、
このように時々防水シートが張られずに雨漏りし、深刻なダメージを受けた建物を見ることがあります。
住宅密集地で隣との隙間がなく、内張り工法でサイディングボードを張る場合などは防水シートを張ると施工がしにくくなるため嫌がる職人もいます。
張ろうと思えばどのようにでも張れるものですので、建築物はいかに施工者のモチベーションやスキルに性能や仕上がりが左右されるものかと改めて痛感しました。
施主様は建設会社や工務店を信用して工事を託す訳ですから各職工に対する施工管理がいかに重要であるかが伺えます。
サイディングボードを撤去しました。
想像以上でした。
柱や梁は3階まで蟻害にみまわれていました。
シロアリによる被害です。
通常シロアリは自身の体液を分泌して木を食べていきます。
その限界値は高さ1m80cm程度と言われていますが、木に水分が多く含まれていますとその限りではありません。
その含まれた水分でいくらでも食い上がっていきます。
これが雨漏りとシロアリによる蟻害の関連性となります。
こちらは室内の写真となります。
和室ですので畳敷きですが、畳を捲りますと大きな蟻害の痕跡が確認されました。
この場所には棚が据えられていたため気付かれなかったそうです。
畳の裏側もボロボロです。
既存の土台が蟻害と雨漏りによる腐食でボロボロでした。
通し柱も蟻害と腐食が進行しておりましたが、柱の芯は十分に残っていました。
土台と通し柱を取り替えるのは費用・工期ともに大変なものになりますので、既存の基礎の横にもう一つ基礎を設置して新たな土台と柱を据えて、室内側にも同じように柱と梁を据えて傷んだ柱を抱き合わせて挟み込む工法を採用しました。
上の写真はその基礎のアンカーと配筋の写真となります。
コンクリートを流し込む型枠を設置します。
コンクリートが十分に固まれば型枠を外します。
新しい土台を据えたら、通し柱を二本建てます。
室内側に建てた柱と挟み込んで金物を通し、ボルトで緊結します。
基礎廻りです。
さまざまな金物を使用します。
室内側から撮った写真で、写真をご覧戴くと大きな梁が見えます。
このように構造体を強化していきます。
数多くのボルトにより、梁が取り付けられています。
この補強により以前にもまして強度が確保出来ました。
外部にはサイディングボードを張る前に構造用合板を張ります。
耐力壁とするためです。
構造用合板の上から、防水透湿シートを貼ります。
サイディングボードからの万が一の漏水に備えることと構造用合板を結露から守るためです。
室内側も構造体強化の後の復旧を進めていきます。
断熱材を柱間に入れていきます。
内壁にも構造用合板を張ります。
こちらは通路にあたる所です。
こちらにも断熱材を差し込んでいきます。
最後に石膏ボードを張り、選んでいただいたクロスを貼ってここは完成です。
雨漏りが一番激しかった和室も内装工事が完了しました。
壁は手を入れていない部分に合わせて一番近い色の聚楽壁調クロスで仕上げました。
畳は一枚のみ新調しました。
一見すると、とてもあのような大工事が行われていたような形跡がありません。
天井も天井板を新設しました。
この雨漏りは一カ所ではありませんでした。
上の写真の右側の壁から別の雨漏りがありました。
既存のサイディングボードを捲るとここにも雨漏りがありました。
ここの梁は構造上、取り替えが非常に困難です。
室内側の床と壁を一旦解体して内側から梁の補強をする事としました。
雨漏りで腐食した部分は削り取り、埋め木を施し修復します。
室内からの写真です。
既存フローリング床を切り取り、壁も柱を残し撤去しました。
そこへ梁を二本設置します。
梁の上に梁を載せてボルトで貫通させトルクをかけて締め付けます。
室内に梁の高さだけ段ができますが、強度を確保出来ます。
載せた梁は柱ともボルトで接合します。
もう一本梁を交差するように、既存の梁に抱き合わせます。
二本の梁に下地を施します。
下地の上に構造用合板を張ります。
雛壇の天場になると同時に更に強度が増します。
室内で抱き合わせた梁の上部に床下地を施し、構造用合板でフローリング下地を造ります。
壁を復旧していきます。
断熱材を差し込んでいきます。
内装工事が完了しました。
壁はクロスで仕上げ、雛壇の天場には床と同じフローリングを張りました。
こうする事で一体感が出て、デザインされた空間のように思えます。
フローリングは板目の向きを変えて全面新調しました。
外壁には金属サイディングを採用しました。
縦胴縁を流し、通気層を確保します。
断熱効果を発揮します。
隣接建物と距離が近いので各職工はいろいろと気を遣い作業を進めました。
完成しました。
少し奥に見えるのが新設したサイディング壁です。
手前の壁とはアクセントをつけるために色を変えました。
次回は引き続き屋根の葺替え工事、外壁塗装などをご紹介したいと思います。