西京区在住のG様より、屋根改修葺替え工事をご依頼いただきました。
こちらのお屋根は前回の施工事例でご紹介させていただいた同じく西京区在住のM様邸と同様の屋根材ニチハパミールが葺かれてありました。
この屋根材に関する特徴的な記述は、前回のM様邸の記事と重複してしまいますのでここでは割愛させていただきます。(品質の問題点やメーカーの対応など)
こちらG様邸では、この屋根材を撤去し陶器平板瓦で葺替えを行う事にしました。
屋根材は多様な種類が有り、素材や形状などにより性能や意匠性が大きく異なります。
陶器平板瓦とは、粘土を高温で焼き締めた比較的重い瓦となりますが、釉薬を塗りおよそ1100度の高温で焼くため表面がガラス質の被膜で覆われ変色や変質がしにくくなります。
そのためメンテナンスによるランニングコストは他の屋根材に比べますと低く抑えられる事が出来ます。断熱性にも優れ、地震や台風にも強い事が立証されています。
また薄物化粧スレート瓦には無い重厚感のある外観を気に入っていただけましたので新しく葺く屋根材は陶器平板瓦を採用しました。
まずは既存屋根材を撤去します。
下葺き材が現れました。
この下葺き材は通称アスファルトルーフィング940と呼ばれる規格の製品で廉価なため新築によく使用されています。コストダウンのためです。
当社が使用する改良ゴムアスファルトルーフィングに比べますと、経年劣化が早く長期に及ぶ二次防水性能が期待出来ません。
既存下葺き材を撤去し、改良ゴムアスファルトルーフィングを敷き専用ステプラーで留め付けていきます。
この陶器平板瓦は瓦桟引っ掛け工法という工法で葺いていきます。
現在もっともポピュラーな瓦葺きの工法で、屋根に均等に割り付けたピッチで桟を打ち、そこに瓦の裏面にある突起物(おもに爪状のもの)を引っ掛け、ステンレス製スクリュー釘で留め付けます。
そのため地震台風に強いのです。
一昨年の大阪北部地震や台風21号の暴風で多くの家屋の屋根に甚大な被害が出ました。
その多くが土葺き瓦屋根と記憶しております。
その教訓もあるのでしょうか、現在次々とそのような屋根は葺替えが進められています。
瓦を葺く前にいろいろな役物を取り付けていきます。
例えば上の写真のように、屋根の両サイド(妻側 けらばなどと呼んでいます)には瓦を固定する桟木やこぼれた雨水を拾う板金などを取り付けます。
瓦を葺く準備が出来てから瓦を屋根に上げます。
軒先から瓦を葺いていきます。
右の写真は軒先の瓦を特殊な形状の釘で留め付けた写真です。
軒先が一番風の影響を受けるため、瓦が風により吹き上げられ捲り上がるのをこの釘で防ぎます。
瓦を桟に引っ掛けて棟まで葺き上げます。
ここは落ち屋根と呼んでいる箇所となります。
落ち屋根には写真のような壁との取り合いが発生します。
ここには水切りを取り付けなければなりません。
木下地を入れて板金を被せます。
これが水切りと呼ばれるものとなります。
大屋根の広い面も同様に棟まで瓦を葺き上げます。
地瓦(平面に葺く瓦)を葺き終えれば袖瓦を取り付けていきます。
先程屋根の端部に取り付けた桟にビスで固定していきます。
地瓦を屋根の両面から棟に向かって葺き上げると棟瓦を取り付けるための桟木をあらかじめ屋根に仕込んでおいた受け金物に乗せ、ビスで固定します。
取り付けた桟木を包むように南蛮漆喰を塗りつけていきます。
この南蛮漆喰はセメントモルタルのように硬化します。
耐水性、撥水性に優れ、瓦の切断部からの雨水の侵入を防ぎます。
この後棟瓦を被せて施工完了となります。
大屋根が完成しました。
使用した瓦は鶴弥スーパートライ110 タイプⅢという商品です。
日本の瓦三大産地である三州瓦(愛知県)のメーカーで、業界でもシェア率を誇る有数のトップメーカーです。
この瓦の特徴はその形状にあります。
平板瓦に有りながら、瓦の両サイドに設けた丸みのある窪みが伝統的な日本瓦を彷彿させて意匠性を高めています。
それでいて洋風な建物との相性も良く、瓦の色を変える事により多様な建築物に使用出来ます。
今回は銀鱗という色を採用しました。
いわゆる銀黒ですが、日照によりいぶし銀に見えたり黒に見えたりと表情を変えてくれます。
非常に趣のある瓦と言えます。
引き続き下屋根を施工します。
この下屋根には下のLDKの採光のため、アルミ製の天窓が設置してありました。
この天窓から雨漏りしており、今回の葺替え工事のご依頼はこの雨漏りが発端となりました。
木枠の角に雨漏りの痕跡が残っています。
天窓は撤去する事にしました。
理由は採光により夏場の室内温度の上昇が著しく、また下に置いてある家具や物が日焼けを起こしてしまうこと、取り替えたとしても今後も経年劣化などによりまた雨漏りのリスクが残ってしまうことなどでした。
現在築年数20年を超える天窓を設置した屋根の雨漏りが急増しております。
多くは天窓のシール部やパッキン部であり、また施工当時に打設されたシーリングの劣化により天窓廻りの板金部からの雨漏りも多く見受けられます。
お客様の約7割の方は「塞いで欲しい」とおっしゃいます。
残りの3割の方は採光のためやむなくといった感じです。
当社ではやむを得ない場合を除きまして出来る限り撤去をお勧めしております。
撤去にあたり、室内側の補修が必要となります。
上の写真のように木枠を入れて断熱材を敷き、石膏ボードで塞ぎます。
後は既存に合うクロスで仕上げます。
天窓を撤去した後は構造用合板を張り、ゴムアスファルトルーフィングを敷きます。
後は大屋根と同じ手順で作業を進めます。
瓦を葺き上げると二方向に壁があるため、水切りの下地を取り付けます。
板金水切りを取り付け、壁際にシーリングを打設すれば完成です。
天窓跡は瓦を葺く事で雨漏りのリスクは無くなりました。
また外観もスッキリとした印象になりました。
before after
工事が終わりました。
やはり屋根に重厚感がでて落ち着きのある佇まいです。
G様邸における屋根のメンテナンスはもうこれで今後必要無くなります。
最後にG様、大切な屋根の工事を弊社にお任せいただき誠にありがとうございました。