中京区 I様より屋根葺替え工事と外壁改修工事をご依頼いただきました。
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中京区の真ん中に位置し、京町家を改装したお洒落なレストランや和食店らが軒を列ねる通りにある京町家の離れの外装改修工事を手がけさせていただきました。
隣接する建物が取り壊されるタイミングで今までメンテナンスが行き届かなかった所を修繕する事になりました。
更地にはホテルか何か大きな建物が建つそうです。
建ってしまえばまたメンテナンスが出来なくなる可能性もあり、更地の間に竣工させなければなりません。
屋根は既存の鉄板屋根を剥がし、断熱材付軽量金属瓦で葺き直しました。
壁は鉄板波板を剥がし、窯業系サイディングボードを張り塗装を施しました。
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真ん中の建物が今回施工させていただいた建物です。
両隣の建物も同じように今回修繕やメンテナンス工事をされていらっしゃいます。
写真① 写真②
写真①
工事前の屋根です。
この様式を瓦棒葺きと呼びます 昔からある鉄板葺き屋根です。
写真②
鉄板を捲って12mm構造用合板を増し張りしました。
写真③ 写真④
写真③
下葺き材は片面粘着層付ゴムアスファルトルーフィングを葺きました。
これはこの屋根が二寸五分勾配と緩く(この屋根材の使用可能範囲の最低限値)万が一の屋根材からの屋根内部への浸水に備えて、強力な釘穴シール性と野地構面に粘着して屋根全体を防水層を一体化させます。
写真④
金属瓦を葺いていきます。
瓦のジョイントには緩勾配用の捨て板をセットして葺き進めます。
写真⑤ 写真⑥
写真⑤
換気棟の為の開口を設けます。
これは屋根裏の熱された空気を外に排出させるための開口となります。
写真⑥
開口部の廻りを木下地で囲い、棟の下地を作っていきます。
写真⑦ 写真⑧
写真⑦
開口部から雨が漏らないように板金水切りを取り付けていきます。
時々この部位からの雨漏りを心配されるお声をいただきますが、弊社では一千棟以上の換気棟取り付け実績(他屋根材での施工も含みます)の中で、一度の雨漏りもございません。
写真⑧
換気棟の取り付けが終わり、屋根が仕上がりました。
写真⑨
写真⑨
外壁改修工事に取り掛かります。
まずは既存鉄板波板を撤去しました。
写真⑪ 写真⑫
写真⑪⑫
建物は時間が経つにつれて傾くことが多く見受けられます。
これは地盤の沈下によるものが多いのですが、基礎から直す事は現実的には不可能な場合が多いです。
意匠性を保つため、木下地で鉛直精度を確保して構造用合板を建て込んでいきます。
写真⑬ 写真⑭
写真⑬
構造用合板の上に防水透湿シートを張り、縦に胴縁を流します。
今、最もポピュラーな外断熱工法です。
シートと外壁材の間に空気層を作り、空気を循環させます。
写真⑭
外壁材は無塗装の窯業系サイディングボードを採用しました。
縦に張っていきます。
無塗装のサイディングボードにしたのには理由があります。
外壁サイディングボードには塗装済みや柄入りやタイル調の意匠性の高いボードと張ってから塗装を施す無塗装のものがあります。
いずれのボードもサイディングボード同士のジョイント部にはシーリング剤を充填します。
現在のシーリング剤は高耐候のものが多くありますが、サイディング外壁の経年劣化で一番最初にダメージが見受けられるのが、このシーリング剤を充填したジョイント部でひび割れや破断された状態を確認する事が多いです。
塗装済みや柄入り、タイル調のボードの上から、更に塗装をする事は通常ありません(新調の場合)外壁色に近い色調のシーリング剤を充填します。
そこでこのシーリング充填部の耐用年数を引き延ばす為に、高耐候シーリング剤の上に高耐候性塗装を施します。
シーリング剤には塗料が乗るタイプと乗らないタイプがありますので、乗るタイプを充填して、サイディングボードごと塗装をかける訳です。そうする事によりジョイント部の経年劣化を遅らせる効果があります。
勿論意匠性を重視した場合、化粧ボードを採用する事も多いため、選択肢の一つとなりますが。
今回はこの更地に建物が建ってしまった後、メンテナンスが出来なくなる可能性があったためこの工法を採用しました。
写真⑮
写真⑮
張り出しの写真です。
縦張りで2スパンに分けて張っていきます。
写真⑯
写真⑯
壁を張り、軒天 鼻隠しも同じサイディングを張りました。
写真には写っていませんが、軒天と鼻隠しの取り合い部に通気口を設けました。
この後塗装の工程に入っていきます。
写真⑰ 写真⑱
写真⑰⑱
外壁塗装の工法は小粒のボンタイル吹き付けの上に超低汚染・超耐久型水性塗料エスケー化研水性セラタイトF(フッ素樹脂塗料)を採用しました。
この塗料は水性仕上塗材の最高グレードで汚れにくく、耐久性の高い塗膜を形成して長期に渡り壁面を保護します。
建物が隣接してしまいますと、次どの様に外壁をメンテナンス出来るのかわからなくなってしまうため少しでも長持ちする塗材で、とのI様のご要望があり採用しました。
写真⑲
写真⑲
外壁工事が完了しました。
次に工程は戻りますが、外壁地中防水工事の施工例をご紹介します。
写真⑳ 写真㉑
写真㉒ 写真㉓
写真㉔
写真⑳㉑
この建物は基礎がブロック積みとなっており、また一階の床が外部地面より低い位置になるため地中の水がブロック基礎を浸透すれば室内に被害を及ぼします。
また目に見える被害が確認されなくても、地中の湿気や水分が建物に及ぼす悪影響は否めません。
シロアリによる被害も懸念されます。
そこで一度ブロック基礎のベースまで掘削をして、地中壁に防水層を設ける事にしました。
写真㉒㉓㉔
掘削をして出現した壁面にアスファルト防水の下地処理として、カチオンモルタルを塗布します。
壁面と防水材との密着性を高めるためです。
写真㉕
写真㉕
今回防水塗材として採用したガスファルトです。
この製品はゴムとアスファルトを主原料とした塗膜防水材で、モルタルやコンクリートに強力に接着し、シームレスな防水層を形成します。
また火気や溶剤を使用しないため安全に施工が出来、刷毛塗りやローラー塗りで施工性に優れています。
専用プライマーと主剤でセットとなります。
写真㉖ 写真㉗
写真㉖㉗
カチオンモルタルが完全に乾燥したらローラーで専用プライマーを塗布します。
写真㉘ 写真㉙
写真㉘㉙
下塗りしたプライマーの乾燥後、主剤を塗布します。
写真㉚ 写真㉛
写真㉚㉛
主剤塗りの乾燥後、更にセメントモルタルを塗布します。
セメントモルタルの下に防水層を形成したわけです。
十分モルタルを乾燥させたあと土を埋戻します。
表面には砕石を敷き水捌け良くします。
写真㉜
写真㉜
工事が全て完了しました。
今回は隣接する建物の解体にあたり良いメンテナンス工事をさせていただきました。
こういう事を行うことで建物の余命を延ばし資産価値を高めていきます。
地震や甚大な被害を及ぼす台風などに備える意味でも外装のメンテナンス工事は重要な事と言えるでしょう。
最後にI様 この度は工事をご依頼いただきまして誠にありがとうございました。