下京区のT様より土蔵の土壁や屋根の一部改修工事のご依頼を受け工事をさせていただきました。
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長期に及ぶ経年劣化と一昨年の台風の被害で土蔵の壁や屋根は深刻なダメージを受けていました。
台風が過ぎ去った後、他の業者さんが応急処置に来たそうですが、手に負えなかったらしくブルーシートを掛けてそのまま放置されてしまったそうです。
T様よりご連絡を受け、現場に急行した私たちはブルーシートより更に丈夫なUVシートを掛けて今しばらく工事着手までお待ちいただきました。
土蔵に続く平屋の瓦屋根は手の施しようが無く、一度屋根を解体することとなりました。
ブルーシートからの雨漏りがあり、垂木も腐食しています。
既存の垂木は取り払い、新設しました。
12mm構造用合板を張り、ゴムアスファルトルーフィングを敷きます。
他の屋根面も同様の作業を行います。
蔵の正面屋根は崩落しかけており、大屋根の軒天もほとんどの土壁が落ちてしまっていました。
この屋根は全て解体してやり替えする事にしました。
壁を残し、屋根の撤去作業を終えました。
ここから新しい柱や梁を組み立てていきます。
残した柱や梁と新しく建てた柱や梁を組んでいきます。
大工の知識と経験、技量が問われる所です。
刻みと言う最も重要な工程を経て建てていきます。
刻みとは、柱や梁に墨付けを行い計算通り組み上がるように材木を加工する工程です。
こういった加工です。
次は垂木を流し、12mm構造用合板を張っていきます。
合板を張った後、ゴムアスファルトルーフィングを敷きます。
屋根材は嵌合式立平葺きを採用しました。
施工性に優れ、軽くコストパフォーマンスも抜群の屋根材です。
シンプルで軽い屋根が葺き上がりました。
ここからは土壁の改修工事をご紹介させていただきます。
土壁は京町家や蔵の壁に多く、適度に湿気調節を行ってくれるなど日本の四季、風土に適した壁であります。
ただ、編んだ竹に土を何層にも塗り重ねその都度乾燥させるといった作業はとても時間が掛かり、またその作業を行える熟練左官工の減少や、材料費・施工費の高騰などにより土壁は敬遠されるようになりました。
ここT様の土蔵におきましても、土壁の復旧では無く、土壁を落とし木下地にモルタル塗り・外壁塗装という改修工法を採用しました。
土壁の土を落とします。
厚みは10cm以上あり、廃棄される土は相当な量になります。
編んだ竹の下地が露出するまで落とします。
虫籠窓の造作に取り掛かります。
虫籠窓とは、京町家や蔵の壁によく見られる縦格子の窓で採光や通風のため設置されています。
モルタル塗外壁のための下地を造っていきます。
木下地が出来れば防水フェルト紙を貼り、ラスを張ります。
ラスとは、金網状でモルタルを食いつかせるために張り、これが無いと防水フェルト紙にモルタルはつきません。
下塗りを終えました。
モルタル塗外壁は通常下塗りと上塗りの二層塗りで構成されます。
モルタル上塗りの前にクラック防止グラスファイバーシートを張ります。
このシートは下塗りと上塗りの間に伏せ込む事により、乾燥時の初期クラックを防ぎ乾燥硬化後は地震などによる外壁の崩落や剥離を極力防ぎます。
またクラックの発生を抑えるため、長期に渡り美観を維持出来ます。
モルタル上塗りが完了しました。
この上にリシンを吹いて、水性シリコン系塗料を塗っていきます。
最後に雨樋を掛けて、足場を払い完成です。
蔵の壁、屋根共に美しく生まれ変わりました。
大屋根は悪いところは部分補修をしました。
軒先は石持一文字瓦で棟は京箱棟の伝統的な仕様のまま外装は一新し、更に数十年風雨に耐えられるように仕上げました。
T様 当社に工事をお任せいただきまして誠にありがとうございました。